明るい改造計画

掲示板でちょっと話題になっていたので、
「自分がもしサイボーグに改造されるとしたら、ゼロゼロナンバーの中では誰の能力をつけてほしいか」
を考えてみた。
一見すれば002の飛行能力や003の視覚・聴覚、あるいは001の超能力なんかが便利そうに思えるが、
戦士としてではなく、普通に社会で暮らしていかなくてはならないとしたら意外と使えるのは、005の千人力ぐらいじゃないだろうか。
あれぐらいの力があれば、毎日疲れもしないで土木作業だけして生きていけるような気がする。何を隠そうわたしは「それだけやってればいい」という仕事がじつはいちばん好きだ。
毎日毎日その場に応じて違うことを考えたり違う人に応対したりしなきゃなんないのはいかにもめんどくさい。もう想像するのもめんどくさい。頭なんか使わずに言われたことだけ言われたとおりひたすらやっていたい。そういえば小・中学校のときも、テスト期間が大好きだった。毎日新しいことを覚えさせられる授業と違って、手を挙げて発言させられる緊張感もなく、答えがわからないからといって恥をかかされる心配もなく、ただ自分一人で配られた紙を決められた時間内に答えで埋めて提出しさえすれば家に帰してもらえるからだ。
当然マンガを描くなどという複雑な作業はいちばんめんどくさくてやりたくない。こんなもんやる奴の気が知れない。
昔、マンガの仕事がなくて「プロアシになればいいんだ」ということもまだ思いつかなかった頃、いくつか普通のバイトを経験したのだがその中で子供服問屋の事務雑用というのがあって、我ながらこれは天職だと思ったものだ。
「この封筒に切手を貼って。」と言われたら、封筒がなくなるまで何百枚延々と切手だけ貼っていればいい。
「この送り状に宛名を書いて。」と言われたら、送り状がなくなるまでただ書き続ければいい。
「このラベルにハンコを押して。」と言われたら、ラベルがなくなるまでひたすらペタペタ押し続ける。
しかも他の事務員たちは何やら難しそうな作業にいそしんでいるので話をするヒマもなく、おかげで話題に頭を悩ませたり気を遣ったりする必要もまったくない。わたしは職場の人間の名前もまったく覚えずにすんだぐらいだ。
まさに理想の毎日で、これでお金がもらえるならべつにもうマンガなんか捨てちまってもいいんじゃないかと本気で思ったぐらいだが、唯一理想どおりでなかったのが、この会社は交通機関のまったくない場所に建っていたため、通勤するには毎朝電車を降りてから駅でタクシーを拾わなくてはならなかったのだ。
毎日しらないおじさんをつかまえて車に乗せてくれるように頼まなければ、会社にたどり着けない。
しかもおじさんは毎日違うため、乗り降りや道中の対応の仕方にもいちいち頭を悩ませなくてはならない。
数日経つうちにわたしは朝駅に降りると、こんなめんどくさいことをするぐらいならそのまま線路に飛び込んで今乗ってきた電車に轢かれて死んだほうがましだと思うようになったため、せっかくの天職も十日で放棄してしまった。
タクシー通勤でさえなかったら、たぶん今でもわたしはここに勤めて毎日切手を貼っているだろう。
しかし、土木作業ができるのならそっちのほうが、切手貼りよりもおそらく給料はいいに違いない。
「ここ掘れ。」と言われたら、「もうやめろ」と言われるまでただひたすら掘り続ける。
言われなければ永遠に掘り続けていたっていい。
サイボーグだから疲れることもない。
その作業効率の良さを見れば、誰も他のもっと複雑な仕事をしろとは言わないだろう。
まさに理想の生活だ。
朝起きて、飯を食う。
現場に出かけて、地面を掘る。
ひたすら地面を掘る。
地面を掘る。
地面を掘る。
昼になって飯を食う。
ふたたび地面を掘る。
地面を掘る。
地面を掘る。
いつまでも地面を掘る。
ひたすら地面を掘る。
埋め戻せといわれたら埋める。
そうして日が暮れる。
日当をもらってねぐらへ帰る。
テレビでも見ながら、酒くらって寝る。

・・・・・・・・・、
なんだ。今とあんまり変わりない・・・・・・



女として扱われていないという点でもまったく同じ。

(2002年3月25日)

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